こんな素敵なことが、六ノ里の山で行われているなんて知らなかった。
地域の獣害対策をしたいと思い、山へ通うようになった自分。
その中で、今の山の環境そのものに疑問を持つようになり、ここ数年は「獣害対策だけでは駄目だ」と強く感じるようになった。
奥山は大事な水源地であり、里山では獣害対策だけでなく、防災という視点も必要になる。
山全体を考えれば、もっと長期的な計画を立てて管理していく必要がある。
しかし、自分にあるのは野生鳥獣に関する知識が中心で、その先にある森林や木々の管理については、想像の範囲を出ない。
そんなところで足踏みしていた最中、仕事を通じて森林・木材関係の人たちと関わるようになり、さらには故郷・六ノ里で広葉樹の天然更新を続ける人たちに出会えるとは。
完全なる灯台下暗しだった。


これは地権者の協力を得ながら、「ものづくりで森づくりネットワーク」(以下、もの森)のメンバーが、六ノ里で約20年も継続している活動。
簡単に言えば「広葉樹の森の管理」ではあるけれど、一般的にイメージする植樹による森づくりとは少し違う。



ここで行われているのは、広葉樹の「天然更新」。
人が苗木を植えて森をつくるのではなく、その森で自然に芽生えた実生を育て、次の森へとつないでいく。
ところが、この天然更新の大敵になるのが、やっぱりニホンジカだったりする。
もの森がこの活動を始めた当初は、獣害についてはそれほど認識していなかったそうだ。
しかし活動を続けていく中で、芽生えた木々がシカに食べられてしまう現実に気づいていったという。
この活動には、東京の自由学園も約10年前から参加している。
生徒たちは実際に森へ入り、広葉樹の更新作業を学ぶ。
そして、この森から切り出された木材は、学校のテーブルなどとして活かされているそうだ。
そこには地元の白鳥林工協業組合(以下、白鳥林工)も、製材や木材加工などで協力している。
森で木が育ち、木を伐り、製材し、ものとして使う。
木を学ぶための、とても面白い連携だと思う。
この日は、森で芽生えた広葉樹の一部を持ち帰り、自由学園で育てる準備も行われていた。

もちろん、新芽は放っておけば勝手に大きくなるわけではない。
発芽を促し、新芽が育ちやすい環境をつくるため、まずは周囲の下層植生を整えていく。
笹が生い茂れば光を遮ってしまうため、できるだけ除去する。


ひたすら続く、なかなかの重労働。
そして、ニホンジカから新芽を守るための防鹿柵も設置する。
「ここまでしなきゃいけないのか?」
そう思ってしまうところもあるけれど、周囲の新芽を見て回れば、あちこちに獣の食痕が残っている。
この辺りは、実際に自分が獣害対策をしているエリアでもある。
だからこそ、しっかり獣害を防ぎきれていないことを、少し申し訳なくも思った。

そして、森の更新を促すためには伐採も必要になる。
大きく育った広葉樹の下には、新たな芽が出始めている。
しかし、頭上を大きな木々が覆っていれば、地面まで届く光は少ない。
次の世代の木を育てるために、木を伐り、空を開け、光を入れる。
いわゆる受光伐だ。
ここでは岐阜県立森林文化アカデミーの方々の専門的な知識と技術が活かされている。


そして、もはや当たり前だけれど、木は切ったら終わりじゃない。
次は「造材」。
伐った木を、何に、どう使うのか。
その用途を考えながら、丸太の長さを決めていく。
今回伐採したのは、シデとホオノキ。
シデはテーブルの天板に、ホオノキは踊り下駄の材になる予定だ。
使い道によって必要な材の寸法は違う。
だから山の中にいる段階から、何に使うのかを考えて木を切り分けていく。


現場で造材された丸太は、その後、白鳥林工の工場へ運ばれて製材される。
そこで体積を計算し、一本の丸太から実際にどれだけの材が取れるのかを確認していく。


自分自身、驚いたのが一本の木から製品として使える部分の少なさだった。
丸太から下駄になる部分だけを見れば、歩留まりはわずか20数%程度。
「こんなに少ないのか」と思った。
でも、話はそこで終わらない。
製材で出た端材も、小物などに使うことができる。
さらに使えるものは別の用途へ回し、それでも残ったものは最後に燃料としてエネルギーに変える。
そう考えれば、一本の木を理論上は100%使い切ることもできるという。
山から木をいただく以上、製品になる部分だけを使うのではなく、最後の最後まで活かしきる。
それもまた、山と付き合っていく上で大切なことなのだと感じた。

今回、もの森の活動に3日間密着してみた。
一言で言うなら、
「まさか六ノ里の山の中に、自分に足りなかった部分を専門にしている人たちがいたとは」
という驚きでしかない。
ここ数年、自分は「野生鳥獣管理だけではなく、山の総合的な管理が必要だ」と考えてきた。
野生鳥獣の管理。
森林や木々の管理。
里山における防災。
水源地としての山の管理。
それぞれを別々に考えるのではなく、山全体を見ながらつなげていく必要があると思っている。
ただ、自分一人ですべてを専門にすることなんてできない。
だからこそ今回、その先を専門にしている人たちとつながれたことが、何より嬉しかった。
ものづくりで森づくりネットワーク。
自由学園。
岐阜県立森林文化アカデミー。
そして白鳥林工協業組合。
しかも、その出会いの場所が、自分が暮らす六ノ里の山だった。
20年近く続いていたのに、自分はその中身をほとんど知らなかった。
本当に灯台下暗し。
これから情報交換をしながら、それぞれの専門を持ち寄って、この山について一緒に考えられる関係になっていけたら嬉しい。
自分にとって今回の3日間は、広葉樹の森について学んだだけではない。
これから自分が山とどう関わっていくのか。
その可能性が、少し広がった3日間だった。





















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